アレキシサイミア(失感情症)乳幼児の特徴 私と子どもの共通点
前回、前々回にアレキシサイミア(失感情症)の事を書きました。失感情症とは、感情が認知できない症状を言います。正しくは、感情が認知しずらい人です。感情の認知度は人それぞれ違います。全くできない人もいれば、少しはできる人もいます。
そんな失感情症について、現在の医学ではよくわかっていないのが現状です。
失感情症は生まれつき感情を認知できない先天的なことが原因の人もいます。しかし、失感情症の乳幼児の特徴はほとんど知られていません。ですが、生まれつき感情が認知できない子には、早くから感情を認知できるよう周囲が働きかけることがとても重要になります。
私は生まれつき感情の認知ができませんでした。そして、それは母方の遺伝です。失感情症の親に育てられた失感情症の母が、失感情症の私を育てました。そして、私の子どもにも失感情症のような傾向があります。
ですので、私が思う子どもの失感情症の特徴、親ができる改善策をご紹介します。
この記事は、子どもを一人しか育てたことがない一般人の分析です。医学的根拠はありません。ですが、ぜひ知ってほしいんです。感情を認知できず苦しんでいる子どもの気持ちを知ってください。
失感情症が与える悪影響
感情を認知できる方には認知できないというのが想像できないと思います。
失感情症はいい影響があまりありません。幼少期の子に関しては悪影響ばかりです。
失感情症は感情が認知できないだけで、脳の中には感情があります。だから、楽しければ笑う、悲しければ泣く、腹が立てば怒るということはできます。できないのは、その笑ってるときや泣いているときに、自分は楽しいとか悲しいって自覚できないことです。そして、失感情症は自分が笑っていること、泣いていることも自覚しにくいです。
どういう状態になるかというと、友達と遊んでて楽しくてみんな笑ってるとします。そのとき、「楽しい」と自覚できず、自分が笑っていることにも気付いていない人がいるんです。ほとんどの人は「みんなで遊んで楽しかったね」と思っていますが、失感情症の人は「みんなは笑ってた。みんなは楽しかったのかな?」と思うんです。同じ空間にいるのにズレが生じるんです。これは喜怒哀楽、全ての感情で起こります。
もし、自分の子どもが失感情症だとどうなると思いますか?
目の前で子どもがキャッキャ言いながら笑っているのに子どもは楽しいことに気付いていないんです。目の前で子どもが悲しくて泣いているのに子どもは悲しいことに気付いていないんです。
子どもは外で誰かに傷付けられて悲しくて怖いと思っているのに、感情が認知できないせいで自分が傷付いていることに気づかないから笑って帰ってくるんです。傷付いていることに気付けないから「今日も友達と遊んできたよ」って笑顔で言うんです。
この辛さ、悲しさわかりますか?でも、これが失感情症の子どもなんです。傷に気付けないから、知らないうちにどんどん傷を増やしていくんです。
笑っているし本人も何も思っていないと言うけど、心には深い傷をたくさん作っている可能性があるんです。
だから、気付いてあげてください。本人も周りも気付きにくいです。でも、傷付いたことにも気付けない子を誰か助けてあげてください。周囲が子どもを助けてあげてください。
失感情症の乳幼児の特徴
私の子はまだ2歳なので本当に失感情症かはわかりません。しかも、私は自分の子ども1人しか乳幼児は知らないので、書く特徴はどんな子にもあることなのかもしれません。ですが、私が子どもに共感した部分がいくつかあるので、誰かの参考になればと思い書いていきます。
①おもちゃで遊べない
最初に子どもに共感したのは、おもちゃで遊ばないことでした。
歯固めや握る系のおもちゃは遊べます。しかし、積み木を渡したとき全く興味を持ちませんでした。これだけなら単なる好みで済むかもしれません。ですが、おもちゃで遊べないって失感情症の特徴の1つなんです。
歯固めや握る系のおもちゃは、噛んだときや握ったときの感触や音があるじゃないですか。だから興味を持てるんです。噛むことに関しては、本能ですから楽しさがなくてもできるんです。
でも、基本的におもちゃって「楽しい」って感情があるから遊べるんです。「楽しい」が認知できない子は、五感からの他の刺激がないと遊べないんです。
積み木とかって何が楽しいのか失感情症にはわかりません。少なくとも私は、子どもの頃も今もわかりません。私の子も、遊び方を教えて親が楽しそうにしても全く興味を持ちませんでした。
子どもの興味はずっと物の仕組みでした。「何故音がなるんだろう」「何故ここが開くんだろう」とかばかりです。「音が鳴って楽しい!」って感じられないから、どうしても仕組みが気になるんでしょうね。
②好きなものを選べない
失感情症は好きなものが選べません。これは子どもも同じです。だって「好き」って感情がわからないんですから。
1歳3ヶ月の頃、音が鳴るサンダルを買ったんです。子どもは大喜びでした。抱っこが好きなのに、散歩では歩きたがって足元を見てはニコニコ笑っていました。
そして、親の言葉がある程度伝わることも確認した上で、散歩に行くときに「どっちの靴を履く?」って音が鳴るサンダルとスニーカーの2足を見せて聞いたら、困った顔をしました。明らかに音が鳴るサンダルを見てるのに、困った顔のまま動かなくなりました。
その時は「こっちの方が好きかな?こっちにしよっか」と言って、音が鳴るサンダルを履かせました。これをずっと繰り返しました。ずっと困った顔をしていましたが、聞き続けました。
子どもはこの2択を選べるようになるまで半年かかりました。
靴だけじゃありません。食べ物も、おもちゃもいろんなもので2択から選べるように聞きました。全て子どもに好みがあることを理解してます。そして、遠慮して言えない訳ではないことも確認しています。それでも半年かかりました。
「好き」って感情を認知できないと選択肢から選ぶことができないんです。
③気持ちの切り替えが早い
感情が認知できないと言っても全くできない訳ではありません。人それぞれ認知度は違います。
子どもの感情の認知度と今の私の感情の認知度は同じくらいです。だから、一緒に遊んでいてとても楽しくても、同じタイミングで急に冷めます。お互い急に真顔になるんです。
失感情症って感情を認知しずらいから、感情を維持し続けるのってとても大変なんですよね。だから、途中で疲れちゃうんですよ。
これは、飽きっぽいと周囲に誤解されがちです。ですが、違います。認知できないから感情を維持し続けられないんです。
悲しさも怒りも同じです。泣いてもすぐ泣き止みます。怒ってもすぐ機嫌が良くなります。怒っていたのに急に笑い出したりします。気分屋だからではありません。感情が認知できないから、感情を維持し続けられないだけです。
④一瞬真顔になる
③でも少し書きましたが、感情を維持し続けることができません。ですので、感情が不安定なんですよ。
一般的な人の感情が直線なら、失感情症は波線です。上がったり下がったり不安定です。ですので、楽しそうにしていても、泣いていても、一瞬真顔になることがあります。
私の子どもも一瞬真顔になります。本当にほんの一瞬です。一瞬冷静さが出るんですよ。これは、私だけじゃなく夫も見ています。私たちの子どもは感情の裏に常に冷静さがあるというのが2人の共通認識です。
⑤感情を認知したとき困った顔をする
子どもも少しずついろんな感情が出てきます。嫉妬、ヤキモチ、怒り、寂しさ、いろんな感情の初体験をしていきます。
私の子どももいろんな感情の初体験をしています。弱い感情だと本人は気付いていないから普通にしています。ですが、強い感情を抱いたときはいつも困った顔をします。
よくわからないから困るんですよ。自分が何か感情を抱いたことは認知できるけど、何の感情を抱いたかはわからないから対応できないんです。「なんだ?なんかモヤモヤする?」としかならないからわからないんです。
⑥周囲の感情には敏感
自分の感情が認知できないから周囲の感情も認知できないと思いがちです。ですが、子どもに関してはそうとも言えません。
乳幼児期の子どもの興味の大半は親になります。だから、親が笑ったり怒ったりして表情を変えるのをよく観察するんです。
そんな時期に子どもが感情を認知できれば親から感情を学ぶだけなので何も問題はないんです。ですが、感情を認知できない子だと、周りの感情の認知ばかり上手になる可能性があります。
私の子どもが現在、自分より周囲を優先するようになっています。親の表情の変化をよく見ています。親の表情を見て優しい行動をいっぱいしてくれます。周囲は「優しい子だね」って褒めてくれます。
違うんです。自分がわからないから周囲の感情を優先させているだけなんです。子どもが下を向いてから笑顔を作るんですよ。これがとても苦しい。
どうしたらいいかわからないから、よくわかってる周囲の感情を優先させてしまうんです。優しいんじゃないんです。優しくするしか方法を知らないだけなんです。
親ができる改善策
失感情症の子に親ができることはたくさんあります。その中で、私の親が私にしなかったけど、感情を育てるには大切だと思うことを3つご紹介します。
①共感して寄り添う
育児では比較的よくする行動だと思います。子どもが笑っていたら「楽しいね」って声を掛けて、子どもが泣いていたら「悲しいね」って声を掛ける光景は想像しやすいと思います。
実は私、親から共感してもらったことが一度もありません。
失感情症って感情が認知できないから、共感されても「…?」としかならないから共感の重要性が理解できないんです。だから、失感情症の親は子どもに共感して寄り添うってことをしません。
だけど、共感して寄り添うってとても大切なことなんです。
先程も書いたように、失感情症の子はモヤモヤしたものしか感じないから感情がよくわかりません。だから、親が状況を判断して「悲しかったね」とか「悔しかったね」とかって感情の名前を教えることが重要なんです。感情に名前が付くだけで感情は認知しやすくなるんです。
そして、子どもが困っていたらどうしたらいいか教えてあげてください。「悔しいね、泣いていいんだよ」とか「ヤキモチ焼いてるのかな?気にせず甘えていいんだよ、こっちにおいで」とか、感情の名前とその感情でとるべき行動を教えてあげてください。
それだけで子どもは生きやすくなります。それだけで子どもは安心します。親が自分を受け入れてくれたってわかるだけで喜びます。共感して寄り添ってあげてください。
②2択から選ばせる
先程の章で書きましたが、失感情症は選べません。でも、これができるようになるのは大切なことです。自分で選ぶって行動が幼少期には大切なんです。
これも母のこだわりが強すぎて、私はほとんどできませんでした。
自分で選択をして、親が受け入れてくれて、自分のしたいように実行するって一連の行動が子どもの感情を育てるのにも、自我を目覚めさせるのにも大切です。
最初は選べなくて、時間がかかってイライラするかもしれません。親が思ったのと違う方を子どもが選んで、思わず否定したくなるかもしれません。絶対失敗することがわかっているから、辞めさせたくなるかもしれません。
でも、全て受け入れてあげてください。選んだものを親が受け入れてくれることが子どもには大切な経験なんです。
最初は2択から選ばせてあげてください。それができるようになったら、3択、4択とどんどん数を増やしていってください。
最近子どもは、アンパンマンのキャラクターがたくさん書かれている絵を見せて「どの子が好き?」と聞いたら、バイキンマンを指差せるようになりました。初めてアンパンマンを見たときから、子どもはずっとバイキンマンが大好きだったんですけどね。子どもから言うまでずっと何も言わずに見守っていたんです。指差したときは大喜びしてしまいました。
③感情を爆発させてあげてほしい
失感情症には感情を爆発させて周囲が受け入れる経験が必要になってきます。これは、大人になってからではできません。集団行動の中ではできません。親がさせてあげてください。
私は感情を爆発させることなく大人になり、大人になってから感情を爆発させて大失敗をしたため、感情を出すのが苦手になりました。私は感情を少しずつ認知できるようになっていますが、今でも感情を出すことが怖いです。
なので、そうならないように親が子どもの感情を爆発させてあげてください。
大泣きしたり、怒り出して手がつけられなくなることもあるかと思います。でも、感情を出すことは否定しないでください。
例えば、子どもが悲しくて大泣きして暴れたとします。じゃあ、いっぱい泣かせて暴れさせて子どもの感情を全て出させてください。それから、「悲しいね。気持ちわかるよ。とても悲しかったね。だから、悲しいときはいっぱい泣いて教えてね。泣いて教えてくれるのがうれしい。でもね、暴れて物を投げるのはやめようね。投げられた物も悲しいし、誰かに当たったら怪我するかもしれない。だから、悲しかったら私のところにおいで。いっぱいハグしてあげるから」みたいな感じで、感情と行動は別にして教えてあげてください。
「泣いちゃダメ」とか「暴れちゃダメ」だけだと、感情が認知できない子は感情自体がダメだと勘違いしやすいんです。感情を出すのは正しいけど行動がダメだと教えてあげてください。
そして、親のそばで感情の出し方を学ばせてあげてください。
まとめ
あくまでも、1人の母が大切な子どもに感じたことです。そして、改善策は私が親にしてほしかったことです。完全な主観で書いています。
ただ、知ってほしいんです。感情は誰でも認知できるわけではないこと、先天的に感情が認知できなくて困っている子がいること、そして感情が認知できないまま大人になると困ることが増えること。
感情が認知できないことを自覚するのはかなり大きくなってからです。でも、それでは遅いんです。自覚した頃にはたくさんの気付けない傷を抱えているんです。
知ってほしいだけです。知ってくださる方が増えて、少しでも生きるのが楽しいと感じる子どもが増えてほしいだけです。みんながなんでも当たり前にできるわけではありません。ぜひ、できない人の存在も知ってください。