質問の意図がわからないのはアスペルガー症候群だけが原因ではない
ASD(アスペルガー症候群)の方は曖昧な表現がわからないという特徴があります。そして、よく言われるのが質問の意図がわからないということです。
これ、かなりASDを改善できた私でもわかりません。ただ、改善していく中で気づいたのがわからないのはASDだけではないということです。定型発達や他の発達障害の方でもわからないことはあるんです。では、なぜASDの特徴としてあげられるのか、《質問の意図がわからない》という点においての私なりの解釈をご説明します。
あくまでも一人のASDの考えです。「こんな人もいるんだ」くらいの感覚で読んでください。
質問をされたときの思考
ASDを自覚する前は「最近どう?」とか「あの人どう思う?」と聞かれても「この人は何が聞きたいんだろう」としか思えず答えられないことが多々ありました。ASDを自覚して周りを観察している今でも「何が聞きたいんだろう」と思うことはよくあります。ですが、どの言葉の意味がわからないかを自覚できるようになりました。
例えば、職場で同性の同僚に「〇〇さんってどう思う?」と異性の上司について何の脈絡もなくいきなり聞かれたとします。
このとき私の中では、外見のことか、内面のことか、上司としてなのか、社会人としてなのか、人としてなのか、異性としてなのか、友達としてなのか、恋愛的なことでなのかと《どう》の部分に対しての複数の疑問が出てきます。
そして、悪口を言いたいのか、良いことを伝えたいのか、悩みや相談があるのか、私を試しているのか、暇つぶしなのかと同僚が質問してきた意味についても考えます。
よって、今の私なら「〇〇さんってどう思う?」と聞かれれば「どう思うとはどういう意味で?」と確認をするようにしています。そうすると、きちんと意味を説明してくれる人と「こんなこともわからないんだ」と呆れた態度をとる人とに分かれます。
質問の意図がわからないのが悪いのではない
先程の例で説明すると、私は物事や人に対して様々な観点から観察をしていますので、前後の会話や事前の情報がないとどの答えを求められているかわからないです。立場や見方を変えれば長所や短所は簡単に入れ替わります。一人の人に対しても複数の評価の仕方があるんです。
しかし、質問する側は自分の思い込みや当たり前と思っている部分は《みんな同じ考えである》と思って省いてすることが多いです。
同僚は「職場の上司の話をしているのだから上司としてに決まってる」と思っているかもしれません。ですが、その上司を恋愛対象で見ていたら質問の意味は異性としてや恋愛的なことでの可能性が高くなりますよね。
それぞれの思い込んでいる主観によって質問の意図が変わるのが普通なんです。ですが、そこを自覚せずに会話をする人が発達障害、定型発達関係なく多いです。
会話は自分の発した言葉を誰かが受け取ってくれて初めて成り立ちます。どちらかの一方の主張だけでは成り立たないんです。それを「察しろ」や「言わなくてもわかる」なんて言うのはわがままです。わかってほしければわかるように説明をするべきです。
一番の問題点は自信のなさ
私は、多かれ少なかれ《質問の意図がわからない》《質問の内容を理解してもらえない》というのは誰にでもあることだと思っています。ただ、ASDの他の特徴として挙げられる《暗黙のルールやマナーを理解できない》《言葉をそのまま受け取ってしまう》《嘘がつけない》という部分により、《質問の意図がわからない》と指摘されるのではと考えています。
ですが、《質問の意図がわからない》ことはさほど問題ではないんです。問題点は《自分の発言やコミュニケーションに自信がない》ことです。
先程も書きましたが《質問の意図がわからない》というのは多かれ少なかれ大体の方が経験することです。でも、大半の方は《質問の意図がわからない》ことに悲しんだり、自分を責めたり、腹を立てたりしません。流してしまうか、軽く謝罪して話を続けるかのどちらかです。
しかし、ASDの方は《質問の意図がわからない》などがあるとわからない自分を恥ずかしがったり、悲しんだり、相手を責めたりします。もちろん、ASDでも全く気にしない人はいらっしゃいます。ですが、私は今でも毎回コミュニケーションで失敗すると悲しくなります。「なんで私はみんながわかることがわからないんだろう」と何度も何度も思いました。
そして、何度も何度も人生の中でコミュニケーションに躓く結果、コミュニケーションに自信が持てなくなり、コミュニケーションの中で感じるズレや失敗は全て自分のせいだと感じてしまいます。もしくは、全て周りが悪いと責任転換をする可能性があります。
そうなると、どんどんコミュニケーションに自信が持てなくなり、さらに周りとの関係が悪化していきます。そして、周りの人が自信のないASDを責めます。みんな、弱い人は責めやすいですからね。結果、いろんな部分に歪みが出ます。
この悪循環がASDの改善を妨げる部分でもあります。
わからないことが悪いのではないんです。これらの悩みは少しの改善で変わります。
改善方法
質問をするときは、あなたのことを知らない人が聞いても理解できるように短くまとめて質問をしましょう。
先程の例で言うと「最近、上司とうまくいってないんだ。上司のことどう思う?」となります。これで悩みの相談であり、上司の評価を聞きたいと相手に伝えられます。
質問をされたときは、具体的に何がわからないかを伝えましょう。どれだけ脳内で考えていても言葉に出さなければ周りはわかりません。黙ってしまうのが一番相手に悪い印象を与えます。された質問の何がわからないか、何の意味を知りたいかを伝えてください。
もし、わからないことを伝えたときに相手が馬鹿にしたような態度をとったら、そのときは気にしなくていいです。その人がしたいのは自分勝手な一方通行の会話です。自分の会話をわかってくれる人と話をしたいだけで話せれば誰でもいいんです。
会話は一人でするものではありません。誰か受け取ってくれる人がいて初めて成り立つんです。言葉を発するときも聞くときも優しさや思いやりを持って行いましょう。
まとめ
ASDはいきなり話しかけられても言葉を理解できないことが多いのに、その上選択肢の多い質問をされたら処理しきれません。でも、理解したくないわけではないんです。みんなと同じように楽しく会話がしたいんです。
お互いに言葉にもう少し優しさを持ちませんか?そして、聞く方も優しさを持って聞きませんか?