私なんか親になる資格がない
あなたも経験ありませんか?欲しいとずっと望んでいた物がなかなか手に入らなくて、仕方がないから諦めて別の物を手に入れたら前に欲しかった物が手に入った、みたいなこと。うれしいけど、今更?って感情が拭えないみたいな。すごく欲しかったからこそがんばって諦めたのに、今更手に入っても…みたいな。
私が妊娠したときはそんな感じでした。不妊で悩んでいたときは妊娠しなかったのに、子どものいない人生を送ると決めたら妊娠とか。でも、それ以上に強く思ったのは「私なんか親になる資格がない」私はこの子を幸せにできないんじゃないか、私なんかが親になったらこの子がかわいそうなんじゃないか。
私には親になる資格がない。
なので、妊娠がわかったときに先生に伝えたのは堕ろす…つまり中絶したいという言葉でした。
みんなそう思うから
こんな酷い言葉を言ったのに、先生は怒ることなく優しく微笑んでこう言ってくれました。
「とてもつらい経験をした人程、私なんか親になる資格がないって言うのよ。私はこの子を幸せにできないって。だからね、焦って答えを出さないで。3ヶ月までに答えを出せとも言わない。堕ろすことのできる5ヶ月までゆっくり考えなさい」
かなり気持ちが楽になりました。みんな同じなんだって。頭ではわかっているんですよ。資格とか関係ないって、そんなこと不安がることないって。この子の幸せを望んでる時点で親なんだと夫も言ってました。
でもね、自分への否定的な気持ちは消えないんですよ。妊娠してる人でも、子どもを産んだ人でも、思っている人や思ったことがあるって人はいっぱいいると思います。私が親でこの子は幸せなのかな?私は親をきちんとできているかな?この子は私が親で幸せかな?
でも、たくさんの妊婦さんを診てきた先生の言葉にすごく安心しました。みんな不安なんだって。それにすぐに答えを出さなくていいってのも安心しました。大切なことだから、いっぱい悩んだらいいよって先生の気持ちに安心しました。普通は3ヶ月までに答えを出せって言う医者がほとんどで、5ヶ月までいっぱい考えていいなんて言ってくれる医者なんてほとんどいないと思います。正直、そんなに悩んでいいの?ってびっくりしました。けど、その言葉のおかげでゆっくり悩めたのも事実。まぁ、かなり悩みました。
出口のないトンネルの先に見えた花火
どうするかかなり悩みました。私と夫の年齢的にもこれが親になれる最後のチャンス。でも、私がこの子を幸せにできる自信がない。夫は、選んだ答えを尊重するから自分で決めたらいいよと、私の気持ちをずっと優先してくれてました。
ずっといっぱい考えてました。ダメなことなんですが、本当に親になることが怖かったんです。私なんかが親になるって、子どもに申し訳ないって気持ちでいっぱいだったんです。でも、ちゃんと自分で決断しないといけないから、逃げることはしたくない。
そんなとき、近くで花火大会をしているってことで久々に見に行きました。あまり人のいない穴場スポットで、夜空いっぱいに広がる花火を見上げました。すごくきれいだった。こんなにきれいなものがあるのかと感動して、こんなきれいな花火を見られる私は幸せだなと涙を流しました。
人生初の嬉し涙。それで、決意できました。
私はこの子を幸せにできないかもしれないし、いい親になれないかもしれない。でも、産んであげたらこのきれいな花火を見せてあげられるんじゃないかなと。世の中にはこんなきれいなものがあるんだよってことは教えてあげられるんじゃないかなって。この子に花火を見せてあげたいって理由で産んでもいいんじゃないかなって。
そんな訳で、親になりました。
産まれてから、ちゃんと花火を子どもに見せましたよ。私はこのきれいな花火を見せたくて貴女を産んだんだよと、抱っこをしながら伝えました。やっぱり嬉し涙を流しましたね。子どもと見れて私は幸せだなぁって涙です。